ベルギーのビール文化・UNESCO世界遺産

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人々の生活の中に生きてきたベルギービール

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ベルギーはヨーロッパの中でもそれほど大きい国ではありませんが、ドイツと並ぶビール大国として知られています。そのビールの歴史は中世にさかのぼります。ローマ帝国が勢力を誇っていた14世紀のヨーロッパ。ローマ皇帝のカレル4世は、ビールの高品質化を目指し、新しい方法でのビール造りを醸造家に課しました。これがホップを使った醸造法です。

この頃のベルギーは、ローマ帝国の配下にあった「帝国フランダース」と「フランダース」に分かれており、帝国フランダースの「ホップを使った醸造法」と、フランダースの「昔ながらのハーブを使用した醸造法」がベルギービールに多様性を与えることになりました。

UNESCO世界無形文化遺産

2016年UNESCOはベルギーのビール文化を世界無形文化遺産に登録しました。
ベルギー各地で造られるバラエティに富んだ味わいを持つビールたちは、ブリュッセル首都圏政府首相、ルディ・ヴェルヴォールト市の言葉を借りれば、

記憶にないほど大昔から我々の一部。

20世紀初めには3000を超える醸造所が稼働しており、カフェの数は20万軒を超えていました。これは家5軒ごとに1軒のカフェがあるという計算になるそうです。

UNESCOは、

ベルギーでは、ビールはただアルコールドリンクとして飲まれるだけではなく、料理や乳製品を作る際にも使用され、食文化にも大きな影響を与えている

としています。

興味深いことに、UNESCOが世界無形文化遺産に指定したのは、ベルギービールではないということです。ベルギーの人々の生活に、長い間ビールがとけ込んでいたことが評価の理由でした。ベルギーの人々が誇るビール文化。そこには歴史があり、料理があり、愛があります。

ベルギービールをスペシャルにした「多様性」

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ベルギーが生産するビールの量は、実は世界で生産されるビールの、たった1パーセントに過ぎません。ヨーロッパにおける生産量もドイツにかないません。では、何がベルギービールを特別な物にしているのでしょうか?それは間違いなく、その歴史が育んできた多様性にあるでしょう。

ベルギービール・鍵は酵母にあり

ベルギービールに多様性をもたらす原料。それは酵母です。酵母はベルギーの醸造家にとっては命であり、慎重に管理されています。通常ベルギーでは、大学など醸造所とは別の場所に酵母を保管し、管理しています。

「縛られなかった」ベルギービール醸造の歴史

ベルギーでは様々なビール醸造テクニックが確立されています。ハチミツやカラメルを使用する醸造法や麦芽だけでなくオーツ麦やそばを使用する醸造法、コリアンダーなどのハーブを使用する醸造法など、数えればきりが無いほど幅広い醸造方が培われてきました。

ベルギーでは、ドイツの「ビール純粋令」のような法令が施行されることはありませんでした。そのおかげで醸造家が自由に、そして試行錯誤しながら様々なビールが生まれてきました。水、麦芽、酵母、ホップというビールの4大原料だけでなく、たとえばローストしたカラメルを使用するなど、ドイツとは違った形でビール造りが進化していったのです。

ベルギービール・酵母

yeast
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ベルギービールは一般的にホップよりも麦芽に重点が置かれています。また、ビールの美しい泡立ちを実現するため、ボトル内での発酵を促すよう、びん詰め前に砂糖と酵母を追加投入することも、ベルギービールをキャラクター付ける独特のテクニックと言えるでしょう。

ベルギービール・ホップ

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ベルギービールの醸造ではホップよりも酵母に重点が置かれるとお話ししましたが、かといってホップが軽視されてきたわけでは全くありません。13世紀には、ホップを使用した最初のビールがブリュッセルで醸造されました。その後もビール醸造に当たっていた修道士らの手により、バラエティに富んだ風味を持つホップが栽培されてきました。しかし現在ではポペリンゲ地方を除いてはホップの栽培はほとんど行われておらず、ベルギービールに使用されるホップの多くはアメリカなどからの輸入品になっています。

ベルギーのビール祭り

ドイツ同様、ベルギーでもビールを主役にしたフェスティバルが多数開かれています。ブリュッセルなど大都市で開催される、規模の大きいフェスティバルから、地元の小規模醸造所が主役になるカントリースタイルのものまで、ベルギー全土で多くのビール祭りが開催されています。

Belgian Beer Weekend(ベルギービールウィークエンド)

ベルギービールウィークエンドは、9月最初の週末にブリュッセルで行われるベルギー最大級のビアフェスです。ベルギーの醸造家連盟が主催するこのフェスティバルには、国内の大規模・中規模ブルワリーのほとんどが参加します。ドイツのオクトーバーフェスト同様、ビール醸造関係者らが参加するパレードやセレモニーが行われる他、参加ブルワリーが持ち込む様々なビールを味わうことができます。

日本でもこのビアフェスの名を冠した「ベルギービールウィークエンド」が春から秋にかけて東京、横浜、大阪、名古屋など、全国各地で開催されています。

North Sea Beer Festival

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North Sea Beer Festivalは、毎年8月最後の週末にオーステンデで開かれるビアフェスです。ベルギー全土から30前後のブルワリーが参加し、彼らが持ち寄るベルギービール200種以上を味わうことができます。

「North Sea」からも分かるとおり、北海沿岸の街オーステンデは、この時期、ビール好きとバケーションに訪れる観光客で賑わいます。会場のレオポルト公園は緑に囲まれた街のオアシス。ライブパフォーマンスを楽しむもよし、ベンチに座ってビールを味わうもよしな、比較的のんびりした雰囲気のフェスティバルです。海沿いの街だけにシーフードレストランでビールを味わうのも楽しみの一つです。

ベルギー・ビールが生活にとけ込んだ国

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ベルギービールはドイツ同様、長い歴史を持っています。しかし、ドイツがビールに「純粋」を求め、その軸上に文化が育まれてきたのに対し、ベルギーでは醸造家がスパイスやハーブを使用するなど「自由」にビール造りを探求し、それをベースに文化が育まれてきました。それが多種多様な香り、味わいを持つベルギービールであり、人々はビール煮込みやビールで熟成させたチーズなど、食にもビールを取り入れました。その人々の「ビール愛」「ビールとの一体感」がUNESCO世界無形文化遺産に指定されたベルギーのビール文化なのです。