電動アシスト自転車の最新動向 1 バッテリー・電池

電動アシスト自転車の最新動向 1 バッテリー・電池

スポーツ

リチウムイオン電池の貢献

いきなりワタクシ事で恐縮ですが、趣味で自転車に乗る人間として(ロードレーサーです)、電動アシスト自転車には偏見を持っておりました。

「んなもん、電池が切れたらタダの激重自転車じゃん」……と。

しかし……ここ1、2年ほどチラホラ入ってくる情報を見ておりますと……なんか、かなりすごいことになっている今日この頃らしいのです。

「エクササイズとしてはイマイチ」、「電池が切れたら重いだけのチャリ」という問題点は本質的には変わっていないのですが、機能性・利便性は大きく向上しており、エコロジー・コンシャスな移動手段としては、とても魅力的なものになってきているのです。

このような動向を支える最大の進化ポイントが、「電池」です。バッテリー。つまり「電池が切れたら……」という欠点の部分が、大きく改善されてきています。

ということで、まずは電動アシスト自転車でもっとも肝心なファクターと言っても過言ではない、バッテリーの「今」を話題にしたいと思います。

今の主流は「重くない・かさばらない・大パワー」のリチウムイオン

携帯電話やスマートフォンにも使われるような、繰り返し充電できるタイプのバッテリーは「二次電池」と言います。電動アシスト自転車にも当然、これが必要になります。

ニッカド電池とニッケル水素電池

この二次電池が、ほんの少し前までは「ニッカド電池(ニッケル・カドミウム電池)」であったり、「ニッケル水素電池」であったりしたのでした。両者ともに鉛蓄電池よりは軽いものの、蓄電容量はあまり十分なものではなかったのです。つまり「電池が切れたら……」の問題が起きやすかったということです。

さらに、ニッカド電池とニッケル水素電池には「メモリー効果」というやっかいな欠点があります。できるだけ電力を吐き出し尽くすまで使わないところで充電すると(継ぎ足し充電と呼ばれます)、その時の残り容量のところで、次に使ったときに電圧が下がってしまうようになる現象です。見かけ上、容量が小さくなってしまうのです。

このメモリー効果は、「一度電池を最後まで放電させてから充電する」リフレッシュと呼ばれる作業をすれば回復できるものでした。しかし、これまたやっかいなことに、「最後まで放電する」のを通り越して「過放電」してしまうとバッテリーは大きなダメージ、それも、メモリー効果とはちがって回復できないダメージを受けてしまうのです。これを避けて放電させるには、保護回路付きの放電装置が必要になります。

リチウムイオン電池のメリット

リチウムイオン電池のなにがいいかというと、まずはこの「メモリー効果がない」という点です。継ぎ足し充電が自由にできる。というよりも小まめに充電した方がバッテリーのためにも良いとされます。

さらにもっと多くの長所があります。

① エネルギー密度が高い

・重量あたりの蓄電量がニッケル水素電池の2倍、鉛蓄電池の5倍

・体積あたりの蓄電量がニッケル水素電池の1.5倍、鉛蓄電池の4~5倍

つまり、同じ容量でも、より軽く、より小さい電池がつくれます。

② 電圧が高い

4ボルト近い電圧はニッケル水素電池の3倍、鉛蓄電池の1.5倍。

③ 自己放電が少ない

放置しておくだけで自然に放電してしまう率が5%程度。ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池の5分の1くらいと優秀です。

④ 充電/放電効率がよい

充電に要した電力量の8~9割を放電できるので、電力の貯蔵効率がよい。

⑤ 寿命が長い

500回以上の充放電が可能。

⑥ 高速充電が可能

放電電流の3倍ちかい電流をあたえて充電でき、短時間で済む。

⑦ 使用温度範囲が広い

-20度~60度という広い温度帯で安定して放電できる。

リチウムイオン電池の短所・爆発の危険性

すぐれた点が多いリチウムイオン電池ですが、欠点もあります。火を噴いたり、爆発したりしやすいのです。

リチウムイオン電池では、充電時にはプラス極で強い酸化反応、マイナス極で強い還元反応が起き、放電時にはその反対にプラス極で還元反応、マイナス極で酸化反応が起きます。どちらのときもプラス極とマイナス極の間でショート(短絡)してしまうと、電池を激しく劣化させ、最悪の場合、破裂したり発火したりします。

リチウムイオン電池に先のとがったものを突き刺すと、そこから火が噴き出して爆発に近い燃焼を引き起こしていく映像を見たことはないでしょうか。動画投稿サイトで「リチウムイオン電池 発火」で検索すると簡単にたくさん見つかります。

「長所」であるエネルギー密度、つまり軽量コンパクトなスペースに大きなパワーが詰め込まれているというポイントと裏腹なのです。

リチウムイオン電池の発火事例

スマートフォンで発火事故を起こしたものとしては、2016年にSamsungのGalaxy Note 7が何件もの発火を起こして機内持ち込みが禁止されたことなど、記憶に新しいところではないでしょうか。「たとえ電源をオフにしていても持ち込み禁止」という、厳しいものでした。それだけ危険だったということです。

2013年には、ボーイング社の最新鋭機、ボーイング787に搭載されたリチウムイオン二次電池から発煙・発火する事故が多発。しばらくの間、全世界で同機種の飛行が停止されました。

電動アシスト自転車でも発火事故は起きています。2016年、パナソニックサイクルテック製の電動アシスト自転車でバッテリーが発火し、火災を招いた事案です。同社は無償で製品交換する対応をとりました。

製品評価技術基盤機構(NITE)は、2012年から2017年の5年間に、少なくとも274件の発火・発煙事故が起きていたと発表しています。

発火・発煙の原因としては、製造過程での不純物混入や、保護回路の不完全さがあります。メーカーの努力が求められます。

二次電池の今後

主に電気自動車や家庭での利用をにらんだものですが、次世代の二次電池も研究・開発されています。もちろん将来的には、電動アシスト自転車にも対応するでしょう。

①リチウム空気電池

理論上、二次電池として最高のエネルギー密度を持たせられるタイプです。リチウムイオン電池の、なんと15倍。マイナス極を酸素に触れさせ続ける工夫が難しいのですが、カーボンナノチューブを使う解決策が実現しています。

②リチウム硫黄電池

電解質を液体ではなく固体とし、安全性を高めた二次電池です。リチウムイオン電池の3.3倍の容量があります。

いずれも実験・試作段階では開発に成功しています。あとはコストの問題のようです。早く民生品が出回るようになるといいですね。

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