電動アシスト自転車の最新動向 4 災害対応

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電動アシスト自転車は災害対策にもうってつけ

残念ながら、日本は地震大国です。2010年の東日本大震災はいまだに記憶に新しいところですし、比較的安全とも言われた九州でも、2016年には熊本群発地震が発生、甚大な被害が生じました。

地震は防ぎようがありません。ですから対応は「起きた後でどうするか、何をするか」になってきます。電動アシスト自転車は、そうした震災対策にも大いに有効なソリューションを提供できるようになっています。

実際には、どんな電動アシスト自転車でも役に立つというわけではなく、震災対応に向けて特化した設計の自転車が必要です。求められるスペックは、以下のようなものです。

電動アシスト自転車による震災対応 ――電源を提供

マグニチュード6を超えるような大震災が起きますと、水道、ガス、電気のような生活インフラはダメージを受けます。ガスはまあ後回しでもいいとして、水と電力は生命にかかわる喫緊の問題です。

水に関していえば、電動アシスト自転車は積載量が限られているものの、あとで述べる「踏破性」の点から役に立つ可能性があります。これはあとで書きます。

電力については、電動アシスト自転車は大きく役立つでしょう。まずもって、大容量のバッテリーを持っていますので、そこから携帯電話、モバイルPC、ラジオなどちょっとした電子機器に充電用電力を供給することができます。

さらに、電動アシスト自転車には「アシストせずに足でこぐ」走行モードもあるわけです。アシスト・オフでこげばモーターがダイナモになってバッテリーに充電していく機能は簡単に装備できますし、下り坂降下時やブレーキをかけた時にバッテリーに充電する回生回路をそなえた機種なら、さらに効率よく充電できます。電力が遮断された状況であっても、小型モバイル電子機器程度に対してであれば、自立して電力供給源になれるのです。具体的には、携帯電話で数分話をする程度の電力は、電動アシスト自転車を10メートルほどこげば得られてしまいます。

このように、電動アシスト自転車は、震災後の緊急電力供給に役立ちます。

パンクしないタイヤによる防災自転車

もうひとつ、電動アシスト自転車に固有の技術というわけではありませんが、防災自転車という観点からは「パンクしないタイヤ」も重要です。

震災後、多くの場合、公道の路面では、アスファルトは割け、瓦礫やガラス片が道路に散らばり、デコボコだらけの道となるでしょう。このような悪路を走行するようには、普通の自転車はできていません。こうした路面でも走破可能になるように、「パンクしないタイヤ」は考えられました。

実は昔からあるウレタンチューブ

「パンクしないタイヤ」は実はけっこう前から商品化されていました。「ウレタンチューブ」といって、タイヤの中にふつうのチューブとはちがうウレタン製の緩衝材を入れるものです。空気を入れませんから、パンクもしないわけです。

ただウレタンチューブには欠点が多く、

・ウレタンは加水分解でもろく、へたりやすい素材に経年変化してしまう

・含んでいる気泡がタイヤ内部の摩擦熱で崩れていってしまう

といった問題点があります。これらの問題点のため、長い間乗っていると、空気がかなり抜けたのと同じ状態になり、ペダルのこぎ感が重く、タイヤが外れやすくなってしまいます。乗り心地もよくありません。

このため、ウレタンチューブはこれまで、商品化されては消え、商品化されては消え、を繰り返してきています。防災自転車に用いるには、少々不安があります。

ゲル充てんによるパンクレス化

続いて、比較的最近登場したのが「リペアゲル」という充てんゲルです。

合成ゴムにオイルを練り込んで作った物質を100度以上に加熱してゲル状にし、空気の代わりにチューブに充てんします。温度が下がるとゲル状だった物質は固化し、ゴムの塊のようになりますが、適度の弾力性と衝撃吸収性を持つようになります。そしてこの物質は、ウレタンのようにへたりはしません。

チューブの中身が空気ではなくゴムのような塊ですので、たとえ釘を刺してもパンクしません。

充てん材を加熱するため、特殊な設備を持ったところでないと加工できない欠点はありますが、既存のふつうのタイヤとチューブでも対応できるというすぐれた面もあります。

防災自転車用としては、合格です。

スポーク構造のみで空気レスタイヤ

さらに、ブリジストン、住友ゴム工業などが開発を進めているのが、特殊な形状をもつ樹脂製スポークの構造のみでタイヤに必要な弾力性と衝撃吸収性を持たせ、空気を入れる必要がない(そもそも空気を入れるところがない)という方式です。

自転車用、車椅子用にはすでに実用段階に達しており、現在は四輪自動車用のものが開発中です。

ウレタンチューブ、リペアゲルには、いずれも「重量が重くなる」という問題点がありましたが、スポーク構造タイヤなら、軽量化も実現できます。

もちろん、防災自転車用として合格です。

このような「パンクしないタイヤ」を装備した防災自転車なら、被災地の奥の奥、自動車が入れないようなところまで入っていくことができるでしょう。

情報収集・発信のプラットフォームに

警察や消防、自治体が震災に対応する初動段階では、情報が重要になります。だから自治体、警察、消防は、まっさきにヘリを飛ばします。情報収集のためです。特に映像と乗員の報告から、初動対応に何が必要か、判断するのです。

防災自転車は自前のバッテリーを持っていますので、小さなアクションカメラも搭載できます。パンクレスタイヤで悪路の走行もできますので、被災地を地上から撮影し、自治体などとシェアすることも可能です。上空からではわからない、地上で見ないことには見えてこない実態も発信できるでしょう。

電動アシスト自転車には、このように防災用として大きく貢献できる可能性が広がります。

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