電動アシスト自転車の最新動向 5 自転車IoT化の近未来展望・1

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自転車IoT化の近未来展望・1

さて、コミュニケーションライド、サイクルシェアリング、防災自転車といった観点から電動アシスト自転車の動向、そして今後考えられる展開を見てきました。共通するのは「自転車のIoT化」がカギになっている点で、「デジタル通信によりネットにつながること」がコアにあります。

しかし、前提となる、この「つながること」のあり方が、近い将来に劇的に変わる可能性があります……というのも控えめすぎる言い方で、確実に変わると断言できます。すでに作業が進行中の話ですから。

それは何かというと、デジタル移動通信規格の「5G」のことです。これは人とITとのかかわりを大幅に変えてしまう変化をもたらし、それは当然「自転車のIoT化」をも巻き込みます。先のことですので、計り知れないところはありますが、展望してみましょう。

5Gの時代は目の前

現在、携帯電話、スマートフォン、モバイルPCの通信規格は「4G = 4th Generation・第4世代」が主流です。「5G」というのは、つまりその次、「第5世代」になります。目下、技術的問題とすりあわせながら、仕様規格を策定する作業が進行中です。総務省とNTTドコモは、東京オリンピックがある2020年のサービス提供開始を目指しています。

策定作業中ということで未確定なのですが、その「目標」は示されています。

スループット 10Gbps以上

現行の4Gでは数百Mbps~1Gbps、つまり最高で毎秒10億ビットという通信速度です。これでも十分に動画配信などをストレスなく視聴できるのですが……5Gはなんと、毎秒100億ビット。4Gの10倍から100倍程度のスループットになります。イーサーネット・ケーブルよりも速くなってしまうのです。実験的には、すでに20Gbpsが達成されています。

タイムラグ 1ミリ秒以下

エンドtoエンド、つまり端末から端末までの通信タイムラグが1000分の1秒。4Gでは100分の1秒ですので、タイムラグが10分の1になり、体感的にはほぼなくなります。

多端末同時接続 100万デバイス/km²

現行4Gでは1平方キロメートルの範囲内で同時に10万台の端末デバイスを同時につなぐことができますが、5Gではこれがまた10倍になります。

こうした高速・大容量・短タイムラグ・同時多端末接続といった特徴を活かし、自動車の高速自動運転、多数のドローンの同時操縦、遠隔手術、8Kなど高密度動画データの転送、いろいろな作業現場の無人化・少人数化など、さまざまな応用が考えられています。

スマホが終わる? PCが変わる?

突然ですが、スマートフォンは高いですね。安いものも出てきましたが、高機能・高性能の機種だとやはり依然として高いです。アイフォンXなんて12万円を超えています。

どうしてこんなに高いのでしょうか。理由はいろいろありますが、最大のものは「高性能なCPU、高速なメモリーを搭載しているから」です。OSを起動し、そのうえでさまざまなアプリを複数同時に実行しなければならないため、快適に使うためには高性能な処理系が必要なのです。

でも、超高速通信の時代には、そういったものが要らなくなります。

私たちがネットとデータのやりとりをする際、その出し入れを行うのが「サーバー」なのですが、このサーバーも立派なコンピュータなのです。演算処理する能力があります。

だったらそっちにやってもらって、手元の端末デバイスは、入力したり結果を表示したりするだけにしようよ……という話です。

「ゼロクライアント」といいます。

手元の端末デバイスが持っているのは、高速モバイル通信モデムを中心に、タッチパネル式のディスプレイと、キーボード、コントローラーなど何らかの入力装置のみ。CPUを持ちませんし、メモリーやHDDなど記憶装置すら持ちません。したがってOSもインストールされていません。通信装置、出力装置、入力装置のみです。

ではこれで、たとえばFPSをプレイしてみましょう。First Person Shooter、つまりアプリケーション上のキャラクターを操作し、1つのフィールドで、ほかの人たちが操作するキャラクターと戦うゲームです。

現在は各自のPCやスマートフォン上でもアプリケーションを起動してゲームをしますが、ゼロクライアントではサーバー側でのみ、アプリケーションが動いています。ユーザーの端末には、そのアプリケーションから配信されたデータを元にした画面が表示されます。

では端末デバイスのコントローラーを使って、ディスプレイ上の敵キャラクターに狙いをつけ、ライフル銃を発砲するボタンを押しましょう。するとそのコマンドは一瞬でサーバーに伝わり、そのアプリケーション上で銃弾が飛び、敵キャラクターに命中します。そしてその様子も一瞬で手元のデバイスに伝わり、表示されて、「よし!」という感じになります。

こういうことです。

今あるもので言えば、ダウンロードせずにブラウザ上で動作するアプリケーションソフトに近いでしょう。ブラウザそのものはデバイスが実行していますので、厳密にはちがうのですが。

要するに、手元のデバイスにCPUもメモリーもなかったとしても、高速情報処理を行うサーバーと、高速・大容量で、タイムラグ1000分の1秒という通信環境さえあれば、今のPCやスマホとまったく変わらないIT利用が可能になるということです。

多数のユーザーが同時にアクセスし、さまざまな処理をリクエストしますから、当然、ホストサーバー側の負担の増大は問題になります。通信ベンダー会社は、サーバーの増強に努める必要があります。

しかし逆に言えば、ベンダー側がホストサーバーを増強すれば、その分だけ手元の端末デバイスは能力が上がることになりますので、買い換えなくても性能アップが望めます。

このようなゼロクライアントシステムが、私たちのPCやスマートフォンに持ち込まれたら何が起こるでしょう。

PCはキーボードとマウスとモニターをモデムにつなぐだけになります。スマートフォンは携帯電話通信ユニットとタッチパネルディスプレイだけです。あとカメラとGPSとBluetooth、加速度センサーなど各種センサーが付きます(いずれも広い意味では入出力装置ですから)。もはやCPUもありませんから、「脳なし」です。もう「スマート」とは呼べません。ですから、スマートフォンの時代は終わります

では次の記事で、そうしたコンピューティングの変化と自転車のIoT化について見ていきます。

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